院内だより

歯の白濁

まだ6月だというのに真夏のような気候が続いたり、梅雨らしく雨が降ったりと安定しないお天気が続きますね。みなさん体調管理にはくれぐれもお気をつけ下さい。
さて、新年度に合わせ、今年も多くの患者さんが矯正治療をスタートされました。そろそろ装置に慣れてきた頃でしょうか。装置を入れてすぐに、衛生士から歯磨き指導があったかと思いますが、矯正治療中は特に歯磨きが難しくなります。磨き残しの状態を放置しておくと、虫歯の初期段階である“白濁”が起こります。今月はこの“白濁”についてお伝えしたいと思います。
そもそも虫歯とは…?口腔内常在菌(誰の口の中にも住んでいる細菌)であるミュータンス菌は、糖を分解して水に溶けないねばねばしたものを歯の表面に作ります。これがプラーク(歯垢)です。プラークは、70〜80%が微生物で10〜20%が細菌の作り出した糖タンパクで構成されていることから、口腔内微生物の塊とも言えるのです。その中でミュータンス菌が酸を産生し、歯の表面のエナメル質を溶かす、というのが虫歯の始まりです。
「エナメル質が溶ける」とはプラークが作り出した酸によってカルシウムやリンなどが溶け出てしまうことを意味します(脱灰)。唾液には酸を中和させる作用と再石灰化の作用があり、きちんと歯磨きをしてプラークを落とせば、唾液に含まれるカルシウムとリンが歯の表面に吸収され再石灰化が起きます。口腔内では常にこの脱灰と再石灰化が起こっています。
しかし、歯磨きが不十分で磨き残しがあった場合、プラークは歯につきっ放しになり脱灰は進んでしまいます。脱灰状態が続くと、歯の表面が白っぽく曇りガラスのようになってきます。これが白濁(ホワイトスポット)です。歯に穴が開いたりといった実質欠損には至っていない、ごく初期のエナメル質の表面的な虫歯と言えます。

%E7%99%BD%E6%BF%81.jpg
[写真はアメリカの矯正の先生からいただいたものですが、白濁の症状がひどいため、やむなく治療途中で装置を外さざるを得なくなったケースです。ブラケット周りに白濁が起こっているのがわかります。このように、白濁の症状があまりにもひどいと、歯の実質欠損をともなうので、歯を守ることを第一に考え、治療途中で装置を外すことを選択せざるを得ないケースも出てきてしまいます。。。]

プラーク由来の白濁はしっかり歯磨きやフロスをした後にフッ素ジェルやMIペーストを使用することで、治る可能性があります。逆に、歯磨きを怠ったり糖分の多い飲食物をダラダラ口にしたりしていると、脱灰は進みエナメル質の実質欠損に至ります。欠損してしまった歯は元には戻らないので、虫歯の細菌層を削って取り除き充塡処置を行わなければなりません。つまり白濁は、エナメル質が回復するかしないかのぎりぎりのボーダーラインの状態なのです!
 歯を長持ちさせるには、機能的な歯並びと咬み合わせはもちろん、歯自体も虫歯のない健全な状態であることが重要です。矯正をしてせっかく美しい歯並びと咬み合せを手に入れても、白濁があったり虫歯治療が多くなされた歯では、Beautiful smileの質も下がってしまいます。衛生士も皆さんの来院時に定期的なクリーニングとブラッシングのアドバイス等でサポートしていきますが、最も大切なのは毎日のホームケアですので、頑張ってくださいね!

2016年06月09日 09:51

« AAO and RSCI in Orlando 2016  |  院内だよりTOP  |  『Airway』 ~空気を吸う気道の幅が下アゴの成長と関係する~ »