院内だより

円板のずれ、早期発見早期治療を!

2009年12月

院内便り10月号でもお話しましたように、当院では必ず矯正治療を始める前に顎関節の状態をチェックし、状態が良くなければまず顎関節の治療を行います。下顎の一方に歯があり、他方の末端が関節につながっているわけで(図1参照)、顎関節と矯正治療が深く関わっていることがおわかりいただけると思います。そこで今回は顎関節治療の重要性についてお話していきたいと思います。

矯正治療のオフィスを訪れる患者さんの多くは顎関節に問題を抱えています。カナダのアルバータ大学のMRIを用いた研究で、来院した思春期の子供の132名中女子85%、男子65%に顎関節の円板のずれがあるという結果が出ました。この研究からわかるように、多くの人が子供のころからパラファンクション、歯ぎしり、食いしばり、外傷、そして不安定な咬み合わせなどによって円板のずれを発症しているのです。この状態を放置すると関節でのクリック音が大きくなり症状は悪化し、円板が引っかかることによって開口しづらくなります。関節が痛みだすことはもちろん、頭痛、肩こり、耳なりなども引き起こします。そして驚くことに、この円板のずれが顎骨、特に下顎の骨の成長発育に大きく影響することが動物での実験、臨床報告、そして院長のこれまでの臨床経験によってわかってきました。円板のずれによって顎の発育が抑制され骨格に影響を及ぼし、下顎が極端に小さくなってしまったり、左右どちらかに曲がってしまったりします。この発育の抑制によって安定した咬み合わせが得られず、矯正治療が難しくなったり、中には将来外科手術による矯正治療を行わなければならない状況が作り出されてしまうのです。このように症状が重症化し、骨格に影響が出るのを防ぐためには早期に治療を始めることが非常に重要です。顎関節で音がし始めたり、違和感があると円板がずれている可能性が非常に高いと言えますので、放置せず一度検査を受けられることをお勧めします。初期段階でスプリント治療を行えば、円板のずれの重症化を防ぐだけでなく顎の成長の抑制を防ぐ可能性があるということもわかってきました。早い段階で治療を行えばその分治療効果も期待できます。一生自分の歯で暮らしていく上でそれらの歯を植立している顎の成長は非常に大切ですので、少しでも疑わしい症状があれば早めに受診していただきたいと思います。

2009年12月06日 15:31

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