院内だより

あけましておめでとうございます!

お正月はゆっくり過ごされましたでしょうか?本年もどうぞよろしくお願い致します。
さて、2011年第一号の院内だよりは、院長からのお話です。

矯正臨床を始めて30年が経ちました。光陰矢のごとし、一つの仕事を追求できることは幸せだと思います。歯を口の中で並べることが出来れば良しと考え、80年代矯正治療を少し甘くみて、歯周病との関連に興味がうつったこともありました。85年の秋からカリフォルニアで機能的咬合に基本をおく2年間のコースを取ったことが私のキャリアを180°変化させ、口の中で歯が並んでいるからといって長持ちする咬み合わせが得られたことにならないことを気づかせられました。その後、顎関節と口の中での歯の咬み合わせをいかに調和させるかということが長い目でみて安定した咬み合わせにつながることを理解していきます。顎関節は人体でも一番硬い骨に囲まれ、通常のX線ではなかなかその位置や形態を把握することが困難でした。又、口の中の歯の並びと顎関節に問題が起きることとの関連を欧米では否定する論文が主流となり、矯正歯科のみではなく歯科界がそれ程臨床治療で顎関節の状態を気にしながら治療を行うという形が失われていました。最近になってMRIによる顎関節の構造、機能状態のチェック、病態の解明が進み、更に日本のメーカーが非常に鮮明に顎関節の骨の状態を0.1mmの精度で3次元的に描き出してくれたお陰で理解するのに都合のよい環境が整ってきました。その結果、それまでコントロールすることが不可能であった顎関節の状態を良い方向に変化させる可能性が明らかになりました。又、その過程で子供にも顎関節の問題の大部分を占める円板の転位が非常にポピュラーで(来院患者の約70%)、年齢とともに転位の状態が複雑に、そして進行度を高めていくことが当院の臨床データで明らかになってきました。
子供の場合、顎関節での円板のずれがわずかでも顎の成長発育に大きな影響を与えます。口の中で歯を並べる前に顎関節を整えるのは歯列の矯正を顎口腔系のシステムを整えることの一環として捉えているためです。顎関節を正常化させ、下顎の発育を阻害するものが除かれると、下顎は良く発達し、それにつれて呼吸のための気道も充分に確保されるようになります。矯正治療は予防としての側面を持ち、上手に用いれば“an ounce of prevention is worth a pound of cure”となります。

2011年01月07日 11:27

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