院内だより

『歯の動く仕組み』

澄んだ青空が秋を感じさせますね。この夏も多くの患者さんに矯正装置が入りました。
これから、この矯正装置と長く付き合ってゆくことになりますが、そもそもなぜ矯正治療には長い時間かかるのかご存知でしょうか。

その答えは、歯が動く仕組みにあります。
①歯と、歯を支える『歯槽骨』の間には『歯根膜』という繊維性のクッションがあります。この薄いスペースが歯を取り囲んでいます。『歯根膜』は噛んだ時の力を分散させるクッションの働きをしています。また神経や血管が通っているので、歯根に栄養を供給したり、物を噛んだ時の感触を脳へ伝えるセンサーの働きもしています。この歯根膜が歯の移動に大きく関わってきます。
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②歯に一定の方向で継続的に弱い力を加えると、歯に押さえられ圧力がかかった歯根膜が貧血状態になります。
③それを正常に戻すために、歯根膜の中で破骨細胞という細胞が動きだし、歯槽骨を溶かします。そこにできたスペースに歯が移動するというわけです。反対側では歯根膜を流れる血液量が増えるため、骨芽細胞という細胞が働き出し、歯が移動してできたスペースに新たに骨を作り出すのです。 

このシステムは歯根膜の血行が重要で、早く治療を終わらせたいからといって、あまり強い力を歯に加えると圧迫された歯根膜が血行障害をおこし、その周辺の組織が死んでしまうおそれがあります。(これを硝子様変性と言います。)
矯正には『至適矯正力』というものがあり、弱い力を持続的にかけていくので、年単位の長い時間がかかるのです。矯正治療によって歯が動くスピードは1ヶ月に0.5〜1ミリ程度と言われています。(年齢、男女差、そして個人差もあり、上アゴ、下アゴでも異なります。)あまりスピードを追求すると先程述べたように組織にダメージを与え、副作用が出てきます。適度の力と適度のスピードこれが大事です。もちろん診断でどの方向にどれ程動かすのかを決めておくことも能率のうえで大切です。1度の治療で機能面、審美面ともにきちんとした治療結果を得る方が大事ですよね。

また、「歯をしっかり磨く(虫歯や歯肉の炎症は治療の遅れに繋がります!)」「アポイントを守る」「ヘッド・ギアーと呼ばれる帽子のような取り外し式の装置をしっかりやる(必要な患者さんのみ。)」ということが治療をスムーズに進めるコツですよ♪矯正は一日にしてならず。機能と審美の調和のとれた歯並びを手に入れる日を夢見て、一緒に頑張りましょう!

2011年10月01日 10:55

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