院内だより

◇◆下顎の成長◆◇

 蒸し暑さを感じるこの頃、学生の皆さんは通例春に行われる歯科検診や身体測定も終わった頃ですね。虫歯はありませんでしたか?身長はどのくらい伸びましたか?そして…下顎はどのくらい成長しましたか!?
 下顎の成長を気にする方は、一般にはそう多くいらっしゃらないと思います。ですが矯正治療においては骨格パターンが大きく関わるため、下顎の小さい方にとってはその成長がとても重要です。下顎枝が正常に伸びると下顎は反時計回りの方向に成長するので、機能的な歯並びと咬み合わせが作りやすくなります。

 実は!当医院ではお馴染みのsplintが、下顎の成長を促すのに有効であることが院長の積み上げてきた経験の元にわかってきました。Splintの効果については以前の院内だよりで触れているように多岐に渡りますが、成長期の子供においてはその効果の幅がさらに広がるのです。

その効果とは・・・
☆下顎の成長を促進する。
当医院の患者さんで比較したケースによると、検査結果後splintを入れて経過を診ていた子供は下顎が成長して骨格パターンが良くなっていたのですが、splintも何もせずに来院が途絶え、1~2年後に再度状態を診て欲しいと来院した子供は、下顎はそれほど良く成長していませんでした。個人差はありますが、歯の永久歯への生え変わり時期は下顎も不安定になりがちでsplintで顎位を安定させ顎関節の良い環境を整えれば、下顎は成長を阻害されることなく伸びるのです。

☆関節円板のずれを防ぐ、または最小限にとどめる。
円板のずれは子供でも多くみられます。当院の統計でも2006年からの3年間6才~15才の患者さんの円板のズレを調査したところ75%の小児から思春期の人達に見受けられました。更に年齢順に3つのグループに分け、軽度な円板のズレから重度な円板のズレを調べたところ、年齢が上がるにつれ、円板のズレが進行していることがわかりました。ずれを初期に発見し、それ以上状態を悪くしないことが大切です。そうすることで下顎の曲がりも最小限で防ぐ事ができます。ずれてしまった円板を元に戻すのは至難の技です。顎関節においても予防が重要なのです。

 子供の矯正と言うと、顎関節を無視してすぐ下顎を前に引き出す装置や上顎を拡大する装置を入れてしまうことも、残念ながら行われているのが現状です。これでは状態を良くするどころか、顎関節に大きなダメージを与えてしまいます。矯正治療は適切な時期に、適切な環境の元で行われなければ良い結果は得られません。顎関節に何も症状がなくても、歯ぎしり、食いしばり、そして小さな顎への外傷によって下顎頭のすり減りが起こっていたり円板のずれが生じていることがあるため、歯科診療を受けられる年齢になったら(診療室のチェアーに座って診査できる5~6才くらい)、一度チェックに来て頂きたいと思います。子供の成長期のタイミングを逃したくありませんね。

2012年07月04日 09:02

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