院内だより

『5つのGOAL』

長く寒かった冬もようやく去り、やっと春の訪れを感じられるようになってきました。新学期が始まるこの季節、矯正治療をスタートされる患者さんも多くいらっしゃると思います。みなさんはなぜ矯正治療を始めようと思われましたか?“歯並びが悪い”“咬み合せが悪い”など、矯正治療を始める目的はそれぞれだと思いますが、当院では矯正治療の目的として『5つのGOAL』を掲げています。今回は、矯正治療で当院が目指すこの『5つのGOAL』についてお話したいと思います。

① 顔貌のGOAL
上下の歯そして根の部分は顔の主な部分の約40%近くを占めます。このことからも、矯正治療で歯を動かすということは顔貌に重大な影響を与えることがおわかりになると思います。特に前歯の前後的、垂直的な位置、傾斜度、上下のアゴの位置はとても重要なポイントです。これらを意識しながら、より魅力的な顔貌を目指します。特に成長期では下アゴの先端部分でオトガイ(chin)と呼ばれる部分(人類だけにあります)の位置がコントロールできます。

② 歯並びのGOAL
顎関節と調和がとれていることが原則ですが、ただ並んでいるのではなく、前歯から後ろの歯にかけて流れるように、リズミカルに並んでいて、審美的にも機能的にも適した配列を目指します。

③ 上下歯牙の機能的な咬み合せ
顎関節をずらすことなく、口腔内で上と下の歯が咬み合う、また下アゴを開口することなく横に動かすと犬歯が奥歯をセパレートさせます。この調和がないと、歯そのもの、歯を支える歯周組織、顎関節、筋(右の絵参照)などへ悪影響を及ぼし治療後も影響が出ます。そのため、当院では顎関節の安定を最初に考え状態を良くしてから、その土台のもとに口腔内で上下の歯を配列します。

④ 歯を支える組織でのGOAL
歯を動かすことにより、その歯に対する歯肉、歯槽骨(歯を支えるための骨)の厚みの変化、歯肉の歯に対する高さの変化、隣の歯との歯肉の形態への影響と多くの変化が与えられます。歯槽骨の量や高さに十分配慮しながら、健康な歯肉が歯をガッチリとガードしていることを目指します。

⑤ 健全な顎関節
多くの矯正前患者では顎関節に問題を抱えています。小児でも60%近く顎関節の中にある円板にずれが生じています。このずれが下アゴの形・位置に大きな影響を与え、最悪の場合アゴが20mm程しか開かなくなります。小児にとっては下アゴの成長がこの円板のずれに大きく影響を受けることが最近の研究でわかってきました。

矯正治療は“歯を並べるだけ”と考えている人が未だに数多くいるのが現状です。ですが、歯だけを動かしたのでは『5つのGOAL』を達成するのは不可能です。逆に言えば、顎関節の状態を把握し矯正治療を行えばこれらのGOALに影響を及ぼす力を持っていることになります。この『5つのGOAL』を同時に達成するには非常に技術が必要ですし、なによりも患者さんの協力が欠かせません。歯は一生使う、大切な器官です。GOAL達成のために、一緒に頑張っていきましょう!!

2014年03月19日 10:18

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