アゴの非対称(アゴは横に曲がっている)

次はアゴの非対称です。一般的に成長とともに段々その程度がひどくなると言われています。成人まで放置すると外科のアシストが必要になる可能性が高くなります。成長加速期前に対応できると成長を味方につけて、骨格パターンに良い変化を起こす可能性が増えるので、早めに治療に入りたいです。

下の写真を見てください。治療前下アゴが大きく右に横に曲がっています。口腔内写真では更にはっきりとわかります。右奥歯は下アゴはの歯が外側にある交差咬合です。

左が治療前、右が治療後の正貌頭部X線規格写真と正面観の顔面写真。下アゴが右にずれています。顔貌写真では顔がふっくらしていてわかりにくいかもしれませんが、X線写真とトレースでは明らかです。治療後は骨格、咬み合せともに改善しました。

左が矯正治療前、右が矯正治療後の口腔内写真と顎関節のCBCT画像。●は歯の真ん中を示しています。矯正前は真ん中を示す●は下アゴは大きく右にずれています。右奥歯は下アゴの歯が外側にある交差咬合です。矯正後は口腔内の正中(真ん中)のずれは改善しました。CBCT画像では治療前は下顎頭は関節窩からずれており、特に右で顕著でしたが、治療後では下顎頭は関節窩におさまっています。これで対称な成長が望めます。

CBCT画像では治療前は下顎頭は両側とも関節窩からずれており、特に右で顕著で、不安定な咬み合せです。まずスプリント療法を行い、咬み合せのを安定化させるのが最も重要です。安定化後下顎頭は関節窩におさまりました。次に上アゴの幅がわずかに狭いので、上アゴに急速拡大装置を装着し、上アゴの骨結合部を緩めて上アゴを横に拡大しました。下アゴにはスプリントの装着を継続し、急激な咬み合せの変化から顎関節を守っています。成長を味方につけることができました。口腔内の正中(真ん中)は徐々に合ってきました。本格的な矯正治療に進むまで成長を見続けます。
装置としては咬み合せのを安定化させる下アゴにスプリントを装着し、上アゴに急速拡大装置で拡大しました。下アゴにはスプリントは治療後も装着を継続しています。治療期間は1年2ヶ月、治療費は35万円(税別・当時)でした。

  • この時期の一般的に治療上のリスクとして、カリエスの発生、歯肉炎、顎関節症の発現をよくあげていますが、本症例では全く起きておりません。

本症例のまとめとしては、矯正治療のタイミングは症例によって異なりますが、骨格パターンに問題がある場合は早めの対応が不可欠です。一般的にアゴの非対称は成長とともに段々その程度がひどくなると言われておます。成人まで放置すると外科のアシストが必要になる可能性が高くなります。成長加速期前のこの時期に対応できると成長を味方につけて、成長に良い変化を起こし骨格パターンをコントロールでき可能性が増えるので、普通の矯正治療の可能性が広がります。