開咬

次は開咬(オープンバイト)です。一言でオープンバイトと言っても、その原因によって対応は違います。前歯部が大きく開いている場合と、前歯だけでなく臼歯も全体的に開いて後ろの臼歯だけが当たっている場合があります。前者の前歯部が開いている場合は何かがその部位に挟まっている、よくあるのは指しゃぶり、または舌の行儀が悪く、そのために開咬しているのです。後者は顎関節の問題が原因の場合があります。なので顎関節を含めた検査・診断が大切です。どちらの場合も放置せず気がついたら早めに治療に入りたいです。

下の写真を見てください。この患者さんは後ろの臼歯は咬み合っていますが、前歯は大きく開いています。指しゃぶりの習慣がありました。発音に影響しますし、舌習癖を誘発したら困ります。前歯部に指が入らないようにする装置(タングガード)を装着しました。タングガードを装着するとすぐに効果が表れます。わずかづつ上下の前歯は近づいてきます。上下のあごの位置の前後的関係が問題がなければ、このように前歯は重なりが出て落ち着きます。

左が治療前、右が治療後の口腔内写真。治療前は後ろの臼歯はかみ合っていますが、前歯は大きく開いています。何かが上下の前歯の間に入って前歯が重なるのを邪魔しています。装着を入れると邪魔している何かが入らなくなるので、この場合は指ですが、前歯は徐々に近づき重なります。

装置としては上アゴにタングガードを7ヶ月装着しました。わずかに咬み合せのずれがあったのでその後咬み合せを安定化させるため下アゴにスプリントを装着ました。上下のアゴの位置に大きな問題はなかったので、歯を動かすことはしていません。治療期間は1年2ヶ月、治療費は35万円(税別・当時)でした。

  • この時期の一般的に治療上のリスクとして、カリエスの発生、歯肉炎、顎関節症の発現をよくあげていますが、本症例では全く起きておりません。

本症例のまとめとしては、初期治療ではタイミングが大切です。小さい努力で大きな結果が得られます。また成長を味方につけられます。様子をみるのも治療では大切な時もありますが、チャンスを逸しないでほしいです。
一般的に言って、初期治療をすれば本格的な矯正治療を避けられるわけではありません。成長加速期前でないとできない治療もありますし、後で行なう矯正治療が複雑になったり、困難となる場合が出てきます。反対に初期治療で骨格などの問題をある程度解決できると、本格的な矯正治療をシンプルにすることができます。