院内だより

PSR9000Nってどんな装置?

先日あるオーストラリア人から、日本人はどうして歯並びを治さないの?という質問を受けました。そういう時私は、日本人は正しい矯正治療の知識を教わっていないからよと答えることにしています。

矯正治療は、焼き物に似たところがあるように思います。例えば、ある人に素晴らしい備前のお茶碗を見せたとします。でもその人が焼き物に何の関心ももっていなければ、せっかくの備前のお茶碗も猫に小判です。しかし、その価値を十分に知ってもらってからもう一度そのお茶碗を見せたとき、今度は見る目も大きく変わり、自分も持ってみたいと思うようになるかもしれません。それと同じで、矯正治療のメリットを正しく理解してもらうことができれば、  多くの人が自分も矯正をしたいと思うようになると思うのです。そのためにも、この受付便りで正しい情報を発信していきたいと思います。
さて、本題に入りましょう。今回はPSR9000NというCT装置についての説明です。

■パノラマX線装置、PSR9000Nとは
池田先生がその可能性にいち早く目をつけ浅草のオフィスに導入したPSR9000Nという装置は、朝日レントゲン工業㈱が開発した未来型のパノラマX線CT装置です。
CTとはコンピュータ断層法(Computed Tomography)の略で、コンピューターを使って身体の輪切り(断層面)をみる装置です。このコーンビームCTの原理と歯科用パノラマの原理を融合し、従来のX線CT装置と比べ非常に解像度の高い画像を得ることができるようになりました。この装置ではX線源と検出器が向き合った形で置かれており、それが身体の周りをぐるっと回りながら信号をとっていきます(これをスキャンと言います)。その時間はわずか13秒。画像上では骨のようにX線が通りにくいところは白く、空気のように通りやすいところは黒く現れます(下図参照)。

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従来の2次元画像 CTでの3次元画像

この装置のおかげで、歯科治療で求められる領域のほぼすべてが三次元にて撮影可能となり、また診断に応じた画像を自由自在に表現することができるようになりました。見えなかった情報が目に見える情報に。まさに新しい時代の到来です。ただ、これだけの情報量が得られるCT装置もそのX線量は気になるところ。人体に優しいCT装置かどうかということも導入の際に考慮すべき大きな要素の一つでした。

CT装置はX線を薄い扇状に絞り込むため、目的の断層面以外にはほとんどX線がかからないようになっています。わずかな放射線は誰もが大地などから自然に受けていますが、影響が出るかどうかは量や期間などで変わります。がんの発生率は一度に200msv(ミリシーベルト)以上あびると線量の増加に比例して増えるそうです。また、胎児が一度に100msv以上の放射線を受けると奇形や知能低下の確率が高くなるとされています。ちなみに通常の検査であびる放射線の平均線量は一般X線が頭部で0.1msv、一方従来のCTは2.4msv(日本医学放射線学会による)。朝日レントゲンの測定によると、PSR9000N装置で顎関節の部位を撮影するために必要な放射線量はデンタルフィルム約8.5枚分に相当するそうですが、これは従来のCTが220枚分であったのに比べると約4/100。CTは何度もとるものではありませんが、  診断のために撮影するくらいなら特に心配することはないと聞き、安心しました。

2004年12月01日 16:24

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