院内だより

『Beautiful Smile』について

先日、院長が出版しました『Beautiful Smile』を、書店で購入されという方とお話ししました。   
本を購入後ご来院されたこの患者さんは、今までも矯正治療についての本を探されていたそうですが、一般の書店に適切な本がなく、(矯正について書かれていても1冊の本の中の数ページ又は数行で写真付きの本などはなかったとのこと)、そこで専門書を扱う書店に入ったところ、当院の本を目にし、詳しく解説されたその内容に惹かれてご購入頂いたとのことでした。

ご自分の治療のことですので、治療前にこのように熱心に興味を持たれることは大切であり、うれしく思いました♪最近では、各地の歯科医院さんや一般の方々からも本のご注文を頂いています。
そこで今回はこの『Beautiful Smile』について、またここ最近の矯正界事情について院長先生にお話をお伺いしてみることにしました。

■2005年上半期院長の院外活動■
・3/31~4/6  アジアパシフィック矯正学会(北京) 招待講演
・5/21~5/23 American Association of Orthodontists アメリカ矯正学会参加(サンフランシスコ)
・5/26~5/27 Roth Williams International Society of Orthodontists)
(サンフランシスコ)招待講演
・6/11~6/12 日本顎咬合学会学術大会総会(東京) 招待講演


院長:『Beautiful Smile』は、約1,000枚のスライドを使用し、一般の人が読んで解かりやすいように作りました。英語版にもなっています。本を出版した目的は、ある外国人の講師が“なぜ日本人の歯はこれ程ひどい状態なのか”、そして彼は、“君たちプロフェッショナルが矯正治療について一般の人に知らせる努力をしていないのではないか”その言葉がこの本となりました。
日本人は、本当に困ってから、つまり歯科医に『もう入れ歯ですよ』とか、『失った歯の代わりにインプラントにしましょう』とか、『歯槽膿漏が進んでいるので抜歯しましょう』とか、そういった段階にならないと歯の健康を考えないのでしょうか。

今春、北京のホテルに滞在しました。その時のテレビの娯楽番組でのことを以前にお話したと思います。若い女性が自分の乱れた歯が気になるのは日本人のように見えるからという言葉を聞いた時、数百名の中国の矯正歯科医の前で、矯正治療について述べている自分は・・・。一週間後に反日デモが各地で起こりました。そのプラカードの中に歯がゆがんだ日本人の顔が描かれているものがありました。

アメリカでは、インビズィラインという取り外し式の半透明装置を何回か型を取って歯を並べていくという方法が最近話題になっています。目に見えにくく、しかも取りはずせる、つまり歯に装置を接着する必要がない、確かに患者さんが聞いて心地良いフレーズが並んでいます。でも少し良く考えてください。上の歯は上の装置、下の歯は下の装置で動かすというこの方法、私はジョークだろう、1~2年で衰退していくのではと考えていました。今年もアメリカ矯正学会にブースが出ており、しかも矯正医が症例発表していたのには2度ビックリ。アメリカの矯正学会もレベルが下がったと3度ビックリしてしまいました。一般の人が、口の中で歯がきれいに並べば(特に前歯6本が並べば)良いととらえるのは理解できますが、プロフェッショナルが本気で取り組むとは、想像すらできませんでした。

矯正治療が治療と呼ばれるには、上と下の歯を良く咬み合わせて、しかも顎の関節に負担をかけないシステムを作りあげることにあります。つまり、神経筋機構・歯を支える歯周組織(歯肉、歯槽骨など)・左右の顎関節との調和をはかり、しかも顔貌や成長発育を考え、口の中で上下の歯がしっかり咬み合うことにあります。プラス美しい歯並びの方が良いに決まっています。インビズィラインという上と下の歯を別々に並べる装置では、歯を単に並べるためのもので、ツメにネイルアートをしているのとそれ程変わらないレベルであると同時に、かえって咀嚼システムに害を与える可能性が大きいという側面を考えると許されるものではありません。矯正治療の困難さは、口の中の歯並びは見せかけで、顎をずらしている人々が非常に多いことです。真の咬み合せは、口の中を見ただけでは解かりにくいのと、下顎の位置に大きな役割を果たす顎関節の様子は、“目には見えない”のです。この目に見えないものを診断するには、問題意識がなければ解りません。そこに現在の状況があり、矯正治療の混乱があります。

当院の初診の患者さんで顎関節の異状がある人は、70%を越えています。小児にも同様の傾向がみられます。『Beautiful Smile』は、ご自身・子供さんの治療前に知っておいた方が良いと思える知識がやさしい言葉で述べられていますので、是非待合室に置いてある本を手にとっていただければと思います。

2005年07月01日 15:36

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