院内だより

虫歯の初期段階…歯の白濁

徐々に秋らしくなってきましたね。読書の秋、スーツの秋、食欲の秋!食べる機会も増えそうなこの季節を前に今月は、虫歯の初期段階である‘歯の白濁’についてお伝えします。

 そもそも虫歯とは…?口腔内常在菌(誰の口の中にも住んでいる細菌)であるミュータンス菌は、糖を分解して水に溶けないねばねばしたものを歯の表面に作ります。これがプラーク(歯垢)です。プラークは、70〜80%が微生物で10〜20%が細菌の作り出した糖タンパクで構成されていることから、口腔内微生物の塊とも言えるのです。その中でミュータンス菌が酸を産生し、歯の表面のエナメル質を溶かす、というのが虫歯の始まりです。
 ‘エナメル質が溶ける’とはプラークが作り出した酸によってカルシウムやリンなどが溶け出てしまうことを意味します(脱灰)。唾液には酸を中和させる作用と再石灰化の作用があり、きちんと歯磨きをしてプラークを落とせば、唾液に含まれるカルシウムとリンが歯の表面に吸収され再石灰化が起きます。口腔内では常にこの脱灰と再石灰化が起こっています。
 しかし、歯磨きが不十分で磨き残しがあった場合、プラークは歯に付きっ放しになり脱灰は進んでしまうのです。脱灰状態が続くと、歯の表面が白っぽく曇りガラスのようになってきます。これが白濁(ホワイトスポット)です。歯に穴が開いたりといった実質欠損には至っていない、ごく初期のエナメル質の表面的な虫歯と言えます。歯と歯の間(隣接面)や歯と歯茎の境目(歯頸部),歯の咬む面や頬側にある溝(裂溝)には磨き残しが起きやすくプラークが残りやすい為、白濁になりやすいので要注意です。

 また白濁にはプラーク以外の問題で起こる場合もあります。子供の時転んだりして乳歯を打ち、萌出中の永久歯の歯冠が傷付きエナメル質の形成不全が生じ、これらが白く見えることがあります。

 プラーク由来の白濁はしっかり歯磨きやフロスをした後にジェル等のフッ素を供給することで、治る可能性があります。逆に、歯磨きを怠ったり糖分の多い飲食物をダラダラ口にしたりしていると、脱灰は進みエナメル質の実質欠損に至ります。欠損してしまった歯は元には戻らないので、虫歯の細菌層を削って取り除き充塡処置を行わなければなりません。つまり白濁は、エナメル質が回復するかしないかのぎりぎりのボーダーラインの状態なのです!
1.治療開始前
morio11-2.JPG犬歯の一部分が白濁しているのがわかります。
2.矯正装置装着直後
mori021-2.JPGこの時点では、まだ白濁に変化は見られません…
3.治療途中
morio31-2.JPG矯正装置が付いているにも関わらず、きちんとしたケアされており白濁が小さくなっているのがわかります!
4.矯正装置除去時
morio61-2.JPG白濁はなくなり、健全な歯を取り戻しました!

 歯を長持ちさせるには、機能的な歯並びと咬み合わせはもちろん、歯自体も虫歯のない健全な状態であることが重要です。矯正をしてせっかく美しい歯並びと咬合を手に入れても、白濁があったりカリエス治療が多くなされた歯では、Beautiful smileの質も下がってしまいます。矯正中は歯磨きが難しくなり、ブラケットやバンドなどの矯正装置周りも白濁の好発部位なので、より気を付ける必要があります。衛生士も皆さんの来院時に定期的なクリーニングとブラッシングのアドバイス等でサポートしていきますが、最も大切なのは毎日のホームケアですので頑張ってくださいね!
 
 顎関節、歯並び、歯周病、虫歯、何においても予防すること・初期に問題を把握し重症化させないことが大切です。白濁を作らないように、もし白濁になってしまったらそれ以上悪化させないように気を付けましょう。そしておいしい物をおいしく食べられる健康な口腔内を維持して、食欲の秋を満喫してくださいね。

2012年10月06日 09:18

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