歯列弓の拡大
『歯を抜かないで治す』
親にも、それを行っている矯正歯科医もうっとりする言葉だけど本当かな?その為、小さいうちに歯列を拡大しようというわけです。3つの大きな問題点があります。
① 拡大した後の安定性
いわゆる後戻りが起きる・・・シアトルにあるワシントン大学のDr. Littleは、矯正処置後の安定性について多くの論文を発表しています。拡大した後、後戻りが起きてしまうことを示しています。2015年サンフランシスコでのアメリカ矯正歯科学会でも発表しています。
② 上アゴでも下アゴでも、拡大すると下アゴの位置が不安定となり、顎関節に悪い影響を与えるのを知っていますか?
大多数の矯正医、または歯医者は顎関節まではチェックしていないので、拡大を行っている当人もわかっていないと思います。このTMJが悪影響を受けると下アゴの成長発育そのものに大きな影響を与えます。下アゴが上アゴに比べ小さくなったり、左右に傾き顔が非対称になります。
③ Dr. Enlowは顔の成長発育研究の第一人者ですが、彼の本または論文は広く矯正学を学ぶ者には基本中の基本と言えるものです。彼の論文「A Comparative Study of Facial Growth in Homo and Macaca」に、人間とサルの成長の違いを示す図があります。サルの下アゴには人間のような突出(chinまたはオトガイ)がありません。人間は立って歩くようになり、オトガイが前に出てきました。図の中の暗く示されているエリアは成長につれ吸収されていく部位です。ですから歯列を拡大することは、この吸収されていく部位に歯を移動させるので、人間の本来の成長にとって反している行為なのです。