「Airway」空気を吸う気道の幅が下顎の成長と関係する
人類が直立歩行への進化の過程で下顎の位置が問題となってきました。十分に前方へ発達しないと、場合によっては開口時気道を圧迫する可能性が生じたのです。発育期、特に思春期に下顎が前方へ成長しないと、この圧迫が起きる可能性が出てきます。人の顔とサルの顔を比較した時、下顎の先端であるオトガイまたはchinが前に出ているのは、進化の過程で必要性が生じたためです。
最近、新聞記事によく睡眠時無呼吸症候群という言葉が載っています。就寝中の呼吸がうまくできず、昼間の仕事に差しつかえが出てきます。予防のため、下顎の前方への十分な発育を思春期に起こすよう努めることも歯並びとともに重要な矯正治療の目標です。下に挙げた症例は、矯正前と矯正治療後の経過観察中でのセファロと側貌写真の比較ですが、矯正治療で主に力を注いだのは、chinがより前方へ出てくるための下顎の反時計回りの成長を促進しています。この症例では、顎関節は正常に保たれ、その影響で矯正治療中そして治療後に良好な反時計回りの下顎の成長を認めました。本当に気道は拡大され倍増しているのがよくわかります。もちろんハンサムにもなりました!!
初診時11歳10ヶ月男子。
主訴は「口元が出ている」、当院での診断は「下顎後退を伴った開咬」でした。
SWAを使用し矯正治療を行い、その後22歳7ヶ月まで成長を観察しました。
オトガイが前方に出て、下顎の反時計回りの良好な成長を誘導できたのが確認できました。
治療期間は2年6ヶ月。
抜歯部位は上下左右小臼歯4本と上顎左右第二大臼歯2本。
上顎左右第二大臼歯の位置には親知らず(第三大臼歯)を用いています。
治療費は110万円(税別)でした。
※治療上のリスクとしては、下顎の成長をうまくコントロールしなければ、最適化された顔貌、顎関節に調和した咬み合せは得られません。